今回は、水を流せない場所でも使えて、微生物の力で排泄物を分解してくれる「コンポストトイレ」を3年間使用してみてわかったメリット、デメリットを検証したいと思います。
「大人の秘密基地」を作るにあたり、実装したい設備のうち優先度の高かったものがトイレです。
長時間過ごす場所にトイレがないと、やっぱり不便ですよね。
周囲に誰もいないのであれば、まあ「野に放つ」という選択肢もあるかもしれませんけど、なかなかそれを実践できるような場所はないのが現実です。
トイレの仕様を考えるにあたり、私は浄化槽を設置しないことにしたので(過去の記事:コンテナの設備に不要だと判断したもの)、野に放たないのであれば、トイレらしいものを水洗ではない方法で実現する必要性が出てきました。
そして散々調べた結果、辿り着いたのがコンポストトイレです。
コンポストトイレとは
コンポストとは、英語の compost のカタカナ表記ですが、意味は「堆肥」「培養土」です。
畑に埋められている緑のでっかい蓋付きバケツのようなものは「コンポスター」と呼ばれます。
これを直訳すると「堆肥作るヤツ」という意味ですね。
つまり、コンポストトイレは「堆肥便所」ってことです。
なお、私は畑をはじめるまで、堆肥と肥料の違いをよく理解していませんでしたが、堆肥は土壌改良のための有機物を発酵熟成させた資材のことで、肥料は植物の生育をよくするために土に混ぜ込む養分のことです。
実際には堆肥にも養分が含まれていることはありますが、使用目的はあくまで土壌改良です。
コンポストトイレは、腐葉土やおがくず、ウッドチップなどの有機物資材に、人類の糞尿を混ぜて堆肥を作る「システム」です。
水で流す仕組みがなくても機能する、すばらしいトイレシステムなのです。
できあがったコンポスト(堆肥)は、畑などで活用することが可能です。
それ以外にも、さまざまなメリットがあります。
コンポストトイレの仕組み
「すばらしいトイレシステム」と書きましたが、仕組みはいたってシンプルです。
一番簡単に作るなら、腐葉土を入れた箱の上に便座を置けば完成です。
え?それだけ?
と思われるかもしれませんが、基本は本当にこれだけです。
強いて言えば、悪臭の原因となる尿を、なんらかの形で大便とは「別に収集」する機構を付けることにより、コンポストトイレはその真価を発揮します。
そう、臭いの原因は大の方じゃないんです。
意外ですよね!私も知ったときは驚きました。
なお、キャンプ場などでたまに見かけるバイオトイレは、より多くの人の利用なども鑑みた上で作られた「超リッチな」コンポストトイレです。
自動で中のドラムが撹拌し続けて、微生物による分解を促し、においの元となる水分を蒸発させる仕組みです。
が、おそろしく高額で、浄化槽よりも高くつきそうだったため諦めました。
というか、小屋に設置するのが目的ならば、そもそもオーバースペックですね。
やはり、少人数での利用であれば、シンプルな仕組みで十分です。
コンポストトイレのメリット
どこにでも設置できる
前述のとおり、上下水道や浄化槽がない場所への設置が可能です。
自宅の庭の小屋だろうが畑だろうが、山奥だろうが車内だろうが、キャンプ地だろうが避難場所だろうが、どこでも大丈夫。
もちろん、据え置き前提のものや持ち運び可能なものまでありますので、用途によっては車内やキャンプには不向きなものもあるでしょう。
けれども一番の特長は、「どこにでも設置できる」ということかと思います。
環境にやさしい
一般的な水洗便所を1回流す際に使用する水量は、だいたい6〜8リットル。
私たちは、自分たちのし尿を処理するためだけに、トイレを使うたびに毎回この水量を使っている訳です。
たかだか一回、うんこ流すだけなのに贅沢ですよね。
流した水は下水となり、下水は下水処理場で処理されますが、毎度毎度、日本中の全世帯からおびただしい量の汚水が発生していることによる環境への負荷はかなりなもの。
おそらくものすごいエネルギーも消費しているのではないかと思います。
が、コンポストトイレの中身はどこにも流れていきません。
トイレの中で分解されれば、以上!終了!
ということです。このトイレ、今後もっと普及すればいいのにと思いますね。
利用者が増えることにより、環境保護の鍵を握る可能性を秘めていると思います。
水で流さなくても、臭わず虫も湧かない
私の母方の祖父母の家は、岐阜県の山の中にありました。
その家のトイレは祖父母が亡くなるまでずーっと「ぼっとん便所」つまり汲み取り式でした。
子供の頃に祖父母の家に訪れた際には、当然この「ぼっとん便所」を使う訳ですが、そこはかとなく匂いますよね…。
そして、中を覗き込むと(はい、なんでも観察するのが好きなので)、夏場はそこでウジが暮らしています。
汚い話ですが、溜まった汚物の表面が、どこからか差し込んだ光に照らされ、不規則な動きに沿ってキラキラと光り輝いている訳です。
その「たゆまないキラキラ」は、ウジの運動によるものでした。
虫嫌いではないものの、そんな記憶が鮮やかだったため、コンポストトイレについてよく知らない段階では、ぼっとん便所と混同して食指が動きませんでした。
が、実際のコンポストトイレはぼっとん便所とはまるっきり別物です!
決定的な違いは、糞尿を同じ場所に溜めておかない点です。
におわないコンポストトイレの秘訣は、コンポスト資材、つまりおがくずと排泄物が、ひたひたの水分に浸されていない状態を作ることです。
私は自分でコンポストトイレを作ってみたことがないためわかりませんが、自作する場合は、大と小を分ける仕組みを作れば良いということです。
ただし、恒久的に使えるものにするのはちょっと工夫が必要なのかもしれません。
当時はコンポストトイレを作る暇もなく、また100%快適なものを短時間で作れる自身もなかったため、調べに調べた結果、既製品を買うことにしました。
カナダでコンポストトイレ一筋のメーカー「San-Mar(サンマール)」製のコンポストトイレです。
このトイレを輸入して販売されている庭仕事ひろばさんから購入しました。
なお実際に、これまで一度も虫が湧いたことはありません。
滅多に掃除しなくていい!
意外に思うかもしれませんが、設置してから3年経ちますが、一度も便所掃除をしたことがありません。
もちろん、自宅と比較すると使用頻度が圧倒的に少ないこともありますが、使用後に便器内の汚れたところにジョウロで水を撒いて、あとは手動でドラムを回すだけです。
ズボラな私にぴったりです。
とはいえ正直なところ、使い方がこれで良いのかどうか、ちょっと自信はないのですが…、汚れが気になるとか、虫が湧くとか、臭いとか、トイレにまつわる不快な問題がこれといって一切発生していないので、まあ良いのかなと思っています。
一度だけ、ドラムの中で塊になっているものを火箸で掴んでドラムの中で砕くという作業をしましたが、やはり匂いません。
そして、微生物が汚物を発酵・分解していることがよくわかりました。
要するに、生き物の排泄物は、体外に排出された瞬間から微生物による分解がスタートし、時間の経過とともに「排泄物」ではなくなっていきます。
つまり、いずれ臭い汚いと感じる物体ではなくなる=バイオの力で浄化されるということであり、掃除は微生物に任せておけばOKということです。
微生物が堆肥を作ってくれる
そうです。コンポストトイレはトイレ機能だけではなく堆肥製造機でもある訳です。微生物により分解された資材は、いずれ畑の堆肥として活用することができるのです。
とはいえ、私はまだ活用したことがありません。使う頻度が少ないため、まだいいかな、という感じです。
災害時にも活用できる
昨今は温暖化のせいで大雨が降ることが多くなり、電気、水道、ガスといったライフラインが、ふいに起こった自然災害によってストップしてしまう危険は高まっていると思います。
これからの時代、雨はどんどん激しく降るようになるでしょう。
ライフラインがストップした際、たぶん一番困るのが、水の確保とトイレかなと思っています。
有事の際に人間が生き延びるために必要なのは、食べ物よりも体温維持と水分補給ですが、家が水没しているとか半壊とか、そういう危機的状況でない限り、寒いのは衣服を気重ねるとか、なんぞやりようがあるのではと想像しています(未体験なので定かではありませんが)。
でもトイレ使えないのは、おそらくかなりのストレスになるでしょう。
そんな時にコンポストトイレは一役買うのではないかと思います。
実際に、災害時の仮設コンポストトイレのような商品が販売されているので、小屋への設置以外にも備えておく価値はあるのではないかと思います。
コンポストトイレのデメリット
ウォシュレットや暖かい便座が付いていない
正直、デメリットはこれといってあまり思いつかないのですが、強いて言うならばウォシュレットが付いてないこととかでしょうか…。
でもこれは、どうしても欲しい人は携帯用ウォシュレットがあるのでそれを使えば解決しますね。
また、当たり前ですが便座が冷たい。
これは、便座にカバーを付けるとか、そういうことで対処するしかなさそうです。
とはいえ、うちでは何もしていません。
でも、これ以外には日本で一般的に普及しているトイレと使用感が極端に違うということはないと思います。
大と小を分けるのがめんどうかも
なにしろまだコンポストトイレを作ったことがないのでなんとも言えませんが、自作するなら、大と小を分ける機構を作るのが厄介、特に「分別収集」した尿の処理がめんどうといったところですかね。
尿はそこらへんに垂れ流しという訳にはいかないので、悩ましいポイントかもしれません。
ちなみにうちのコンポストトイレは、余剰水分だけを分離して排出するドレインホースなるものが付いているタイプなのですが(商品については後ほど)、これはコンテナハウスの外にホースを出して、その先を地面に穴を掘って埋めたポリタンクに差し込んで貯めています。
が、夏暑すぎて蒸発してしまうのか、水分が溜まっている状態を見たことがないです…。
使用頻度次第で、大きな問題にはならないのかもしれません。
なお、おしっこを分ける機能がない場合は、おがくずを入れて撹拌することで水分の調整を行うという方法もあるようです。
寒いと微生物があまり活動しなくなる
コンポストトイレの分解の立役者は微生物です。
が、この方たちは18度以下の気温になると、活動がスローダウンします。
生き物は身体の大小に関わらず、寒いとみんな動きがのろくなるようですね。
シロクマとかアザラシとかペンギンとかクジラの場合は違いますが。
微生物の活動が緩慢になると、分解速度が落ちるため、コンポストトイレがあまり機能しないことになります。
ので、冬に使用する場合は室温に注意が必要です。
微生物はどこからやって来るのか
私にとって、これははじめ大いなる疑問でした。微生物をどこかから「招聘」せずとも、なぜ腐葉土に混ぜるだけで分解されるのか。
でも、この疑問は、一般常識に立ち帰ればわかる話でした。
漬物を作る際は、野菜を常温で発酵させる訳ですが、わざわざ微生物である「乳酸菌」をどこかから連れてきて注入するということはしません。
いや、それ以前に、野に放たれた動物の糞尿は、そのままでも分解されます。
特に気温の高い夏場は、糞尿に限らず野菜屑なども土に埋めておけば数日で影も形もなくなります。
つまり、微生物は別途分解のために注入しなくても、「そこらへんにいる」ということです。
物が腐敗するのも微生物によるものですが、暖かいと勝手に腐ることを考えると、当たり前のことなんですよね…。
それが、現代の生活においては微生物に触れ合う機会があまりにもなく、その存在さえ忘れ去ってしまっていて、「そこらへんにいる」ということに、なかなか気づけませんでした。
私が購入した据え置きタイプのコンポストトイレ
私が購入したコンポストトイレは、庭仕事ひろばさんが販売されているSan-Mar エクセルNEという商品です。
電気を使わず、前述のドレインホースで余剰水分を分離するタイプです。持ち運びは不可です。
購入先の庭仕事ひろばさんにオススメしていただいたものですが、さすがコンポストトイレの専業メーカーが作った商品というだけのことがあって、完成度が高いです。
使い方は非常に簡単で、用を足したら便座直下に格納されているハンドルを回すだけです。
たまにウッドチップを継ぎ足したりしていますが、頻度や量など、かなりテキトーです。
なお、購入前に、
- 使用頻度
- 使用人数
- どのモデルが良いか
といった疑問があったのですが、問い合わせに対しても非常に丁寧かつ親切にご対応いただき、さらに納期まで早めてくださり大変ありがたかったです。
自作するのはめんどう、とりあえず試したいなら?
おしっことうんちを分ける機能はないけれど、まずは使ってみたいという方で、座り心地と低価格を重視するなら、このポータブルトイレがオススメです。
しっかり蓋ができるのも良いですね。キャンプやアウトドアなど、持ち運びたい場合の活用にも期待できます。
このトイレに、あらかじめ腐葉土を入れておいて、使用後におがくずを撹拌するという使い方をすれば、気温がそこそこ高い時期であれば数日で分解するはずです。
トイレットペーパーも水分があれば分解されます。
こういうトイレに設置する処理用の紙パックなどもありますが、断然、私は腐葉土+おがくずでの使用を推奨します。
その理由は、使い捨ての袋を使うよりもエコで、大をした後の「ビジュアル」が、腐葉土の上にしておがくずをかけて撹拌する使用法の方が、処理用の袋に直に入っているより圧倒的に違和感がないし、におわないからです。
分解されたコンポスト(堆肥)は家庭菜園やプランターで使用すると、小さな自然の循環がそこに誕生して良いですね。
というわけで、携帯性を重視される方は、このトイレ+腐葉土+おがくずでの使用をオススメします!
腐葉土は、混ざり物がなく、完熟している高品質なものを使用します。
杉とひのきのおがくずを使うと、いい香りがしそうですね。
手を洗うのにはこのタンクを洗面台の上に設置して活用しています。